皆さん、こんにちは!
みなさんは洗剤と言われると何を思い浮かべますか?
食器洗い洗剤?石鹸?様々な洗剤があります。
ですが頑固な汚れを落とそうと思うとアルカリ性の洗剤が不可欠です。
実は、家の中に付着する汚れの約80%は酸性汚れだと言われています。
キッチンの油汚れ、リビングの手垢、お風呂の皮脂汚れ…
これらはすべて酸性の汚れです。
そんな日常生活で避けられない汚れに対して、
アルカリ洗剤は驚くほどの効果を発揮します。
今回はアルカリ洗剤の知られざる役割、落とせる汚れ、
そして使用上の注意点などを詳しく紹介していきます。
① アルカリ洗剤とは
◆アルカリ洗剤の役割
アルカリ洗剤とは、pH(ペーハー)値が8以上の洗剤のことを指します。pHは0〜14の数値で液体の性質を表し、7が中性、それより小さければ酸性、大きければアルカリ性となります。アルカリ洗剤が汚れを落とす仕組みは「中和」にあります。酸性の汚れにアルカリ性の洗剤をかけると、お互いの性質が反応し合って中和され、汚れが分解されて落ちやすくなるのです。特に油汚れに対しては、アルカリが油脂の成分である脂肪酸と反応して一種の石鹸を作り、汚れを洗い流しやすくします。さらに、アルカリにはタンパク質を分解する働きもあります。タンパク質は多数のアミノ酸が結合してできていますが、アルカリはその結合を切ったり緩めたりすることで、タンパク質汚れをもろくして落としやすくするのです。
◆アルカリ洗剤の種類
アルカリ洗剤は、そのpH値によって大きく2つに分類されます。
・弱アルカリ性洗剤(pH8〜11)
洗浄力と低刺激のバランスが取れた洗剤です。油汚れや皮脂汚れに効果的でありながら、強アルカリ性に比べて人体への影響が少ないのが特徴です。代表的なものに重曹(pH8.2程度)やセスキ炭酸ソーダがあります。日常の掃除や洗濯に適しており、食器洗いや衣類の洗濯にも使用できます。
・強アルカリ性洗剤(pH11以上)
非常に強力な洗浄力を持つ洗剤です。長年蓄積された頑固な油汚れや炭化した汚れ、焦げ付きなどに対して優れた効果を発揮します。主な成分として水酸化ナトリウム(苛性ソーダ)や水酸化カリウムが使用されています。その分、人体への刺激も強いため、取り扱いには十分な注意が必要です。
◆一般家庭用のアルカリ洗剤は?
私たちが普段使っているアルカリ洗剤には、様々な製品があります。
・キッチン用洗剤
花王の「マジックリン」などのキッチン用洗剤は、弱アルカリ性または強アルカリ性の製品が多く、換気扇やコンロ、グリルにつく頑固な油汚れをキレイに落としてくれます。使い方は簡単で、油汚れに吹きつけて数分待ってから雑巾などで拭き取るだけです。
・洗濯用洗剤
「アタック」や「アリエール」などの一般的な洗濯洗剤の多くは弱アルカリ性です。衣類に付着した皮脂汚れや食べこぼしを効果的に落とし、消臭効果も期待できます。
・お風呂用洗剤
「カビキラー」などの塩素系漂白剤もアルカリ性洗剤の一つです。黒カビは弱酸性のため、アルカリ性洗剤を使用することで効果的に除去できます。
・自然由来のアルカリ剤
重曹、セスキ炭酸ソーダ、炭酸ソーダなどは、自然由来でありながらアルカリ性の性質を持つため、環境にも優しく小さなお子様やペットがいるご家庭でも安心して使用できます。
② アルカリ洗剤で落ちる汚れ
アルカリ洗剤は酸性の汚れ全般に対して強力な効果を発揮します。具体的にどのような汚れが落ちるのか見ていきましょう。
・油汚れ、皮脂汚れ
キッチンのコンロや換気扇に付着したギトギトの油汚れ、衣類の襟や袖についた皮脂汚れは、すべて酸性の汚れです。アルカリが油脂の成分である脂肪酸と反応して石鹸化することで、水と馴染みやすくなり、はがれやすくなります。
特に、フライヤーや五徳などの頑固な油汚れには、強アルカリ性洗剤が威力を発揮します。業務用の強アルカリ洗剤では、pH12〜14という高いアルカリ度で、長年蓄積された油汚れも分解できます。
・タンパク質汚れ
垢(あか)、血液、卵や牛乳などの食べこぼし、これらはすべてタンパク質が主成分の汚れです。アルカリはタンパク質の結合を切って分解したり、構造を変化させたりすることで、繊維にしがみつく力を弱らせます。その結果、少しの力を加えるだけで洗い流すことができるのです。特に血液汚れは落としにくいとされていますが、アルカリ性洗剤のタンパク質分解作用によって効果的に除去できます。
・手垢・指紋
リビングのドアノブ、電気スイッチ、テーブル、子供用のおもちゃなどに付着する手垢や指紋も、実は皮脂による酸性の汚れです。これらもアルカリ性洗剤で効果的に落とすことができます。弱アルカリ性洗剤を布巾やペーパーに染み込ませて優しく拭き、その後水拭きをすれば簡単にキレイになります。
・焦げつき、炭化した汚れ
鍋やフライパンの焦げつき、オーブンレンジの炭化した汚れなども、アルカリ性洗剤が得意とする分野です。特に重曹は研磨作用も持つため、鍋の焦げ付きや茶渋汚れなどを落とすのに効果的です。
・黒カビ
お風呂場に発生する黒カビは弱酸性のため、強アルカリ性の塩素系漂白剤(カビキラーなど)が有効です。漂白剤でカビの色素を分解し、アルカリでカビの細胞組織を破壊することで、根本から除去することができます。
③ アルカリ洗剤で落ちない汚れ
アルカリ洗剤は万能ではありません。同じアルカリ性の性質を持つ汚れには効果がないため、注意が必要です。
・水垢(水アカ)
浴室の鏡や蛇口、キッチンのシンクなどに白く固まる水垢は、水道水に含まれるカルシウムやマグネシウムなどのミネラル成分が乾いて固まったもので、アルカリ性の汚れです。そのため、アルカリ性洗剤では落とすことができません。水垢を落とすには、酸性の洗剤(クエン酸、お酢、専用の酸性洗剤など)を使用する必要があります。クエン酸の力で水垢の主成分であるカルシウムを溶かして除去するのが効果的です。
・石鹸カス(金属石鹸)
お風呂場でよく見られる白い粉末状の汚れは「金属石鹸」と呼ばれるもので、水道水に含まれるカルシウムやマグネシウムと石鹸が反応してできたアルカリ性の汚れです。この汚れもアルカリ性洗剤では落とせません。
金属石鹸を落とすには、酸性の洗剤やクエン酸を使用します。一方、黒っぽい灰色の「酸性石鹸」と呼ばれる石鹸カスは酸性の性質を持つため、逆にアルカリ性洗剤が効果的です。ただし、実際の浴室では両方の性質が混ざり合った複雑な汚れになっていることも多く、その場合は酸性洗剤とアルカリ性洗剤を使い分ける必要があります。
・トイレの尿石
便器にこびりついた尿石もアルカリ性の汚れであるため、アルカリ性洗剤では効果がありません。尿石を落とすには、pH3未満の酸性洗剤を使用する必要があります。
・重要なポイント
汚れを落とす際は、「汚れと反対の性質を持つ洗剤で中和させる」という原則を覚えておきましょう。酸性の汚れにはアルカリ性洗剤、アルカリ性の汚れには酸性洗剤という使い分けが重要です。
④ アルカリ洗剤の危険性について
アルカリ洗剤は非常に便利ですが、その強力な洗浄力ゆえに危険性も伴います。安全に使用するために、以下の点に注意しましょう。
・タンパク質を分解する作用
人間の皮膚はタンパク質でできています。そのため、アルカリ洗剤が皮膚に触れると、タンパク質変性作用によって皮膚が侵されてしまいます。
アルカリ度が強ければ強いほどタンパク質変性作用が強くなり、肌が傷みやすくなります。皮膚の表面は通常わずかに酸性(pH約5.5)を示しており、これが「酸性マント」と呼ばれる保護層を形成しています。アルカリ性洗剤が皮膚に触れると、この酸性マントを中和して弱め、皮膚のバリア機能を低下させてしまうのです。
特に強アルカリ性洗剤(pH11以上)に素手で触れると、皮膚が溶けることもあり、火傷のような症状を引き起こす可能性があります。また、弱アルカリ性洗剤でも長時間触れていたり、皮膚が弱い人には肌荒れを引き起こす可能性があります。
対策:必ずゴム手袋を着用する
目や口などの粘膜に触れないよう注意する
もし皮膚についた場合は、すぐに大量の水で洗い流す
痛みやしびれ、違和感が残る場合は医療機関を受診する
・金属の腐食
アルカリ洗剤は特定の金属を腐食させる性質があります。特に注意が必要なのがアルミニウムです。
・アルミニウムの腐食
アルミは「両性金属」と呼ばれ、酸とアルカリの両方に反応します。強アルカリ性の洗剤にアルミを浸けると、金属のアルミが溶けて「アルミン酸ナトリウム」と「水素」になります。アルミ製品をアルカリにさらすと、白く粉を吹いたようになります。これは水酸化アルミニウムができた証拠で、要するにアルミニウムが腐食したということです。腐食が進むと、アルミ鍋に穴が開いたり、壊れたりします。過去には、アルミ缶に強アルカリ性洗剤を入れて密閉したことで、発生した水素ガスの圧力により缶が破裂する事故も複数発生しています。
・その他の金属
アルミのほかにも、亜鉛、スズ、鉛などの金属もアルカリに反応して溶けます。亜鉛やスズは真鍮の材料やメッキとして使われているので注意が必要です。また、銅や真鍮もpH11以上の強アルカリ性では変色や腐食が起こります。
対策:アルミ製品(鍋、ボウル、サッシ、レンジフードのファンなど)にはアルカリ性洗剤を使用しない
アルミ缶に絶対にアルカリ性洗剤を入れない
真鍮、亜鉛メッキ製品にも注意する
アルミ製品を掃除する場合は中性洗剤を使用する
・素材への影響
金属以外にも、アルカリ性洗剤が使えない素材があります。
動物性繊維
ウール、シルク、カシミヤ、アンゴラなどの動物性繊維は、人間の髪の毛と同じタンパク質でできています。そのため、アルカリ性洗剤を使用すると繊維が傷んでしまいます。これらのデリケートな衣類を洗濯する場合は、中性洗剤を使用しましょう。
・その他の素材
ガラス、大理石、人造大理石:シミが残ったり表面がくすんだりする
無垢の木材、ニスやワックスを塗った面:変色や劣化の原因になる
シリコンゴム(白くて半透明なもの):劣化しやすい
・換気の重要性
アルカリ性洗剤や酸性洗剤は、溶液から成分が蒸発し、空中に漂った成分を吸い込みすぎると人体に悪影響を及ぼします。使用時は必ず窓を開けるなど、しっかりと換気を行ってください。特に強アルカリ性洗剤を使用する際は、マスクやメガネの着用も推奨されます。
・目に入った場合の危険性
アルカリ性洗剤が目に入ると、最悪の場合は失明する恐れがあります。まぶたや顔に付着した場合もすみやかに水で洗い流しましょう。また、目に入ってしまったらすぐに応急処置を行い、必ず眼科医の診察を受けてください。
⑤ まとめ
◆アルカリ洗剤の基本
アルカリ洗剤は、pH8以上の性質を持つ洗剤で、弱アルカリ性(pH8〜11)と強アルカリ性(pH11以上)に分類されます。家の中の汚れの約80%を占める酸性汚れに対して、中和反応により驚異的な洗浄力を発揮します。キッチン用マジックリン、洗濯用洗剤のアタックやアリエール、お風呂用のカビキラー、そして重曹やセスキ炭酸ソーダなど、私たちの身近にある多くの洗剤がアルカリ性です。
・落とせる汚れ
アルカリ洗剤が得意とするのは、油汚れ、皮脂汚れ、タンパク質汚れ(血液、食べこぼし、垢など)、手垢、焦げつき、黒カビなど、すべて酸性の性質を持つ汚れです。特に、アルカリは油脂を石鹸化し、タンパク質を分解する働きがあるため、これらの頑固な汚れを効果的に除去できます。日常の掃除から大掃除まで、幅広い場面で活躍する頼もしい味方です。
・落とせない汚れ
一方で、水垢、石鹸カス(金属石鹸)、トイレの尿石など、アルカリ性の汚れには効果がありません。これらの汚れを落とすには、逆に酸性の洗剤(クエン酸、お酢、酸性洗剤など)を使用する必要があります。汚れの性質を見極めて、適切な洗剤を選ぶことが効率的な掃除の鍵となります。
◆危険性と注意点
アルカリ洗剤の強力な洗浄力の裏には危険性も潜んでいます。タンパク質を分解する作用により、皮膚に触れると肌荒れや火傷のような症状を引き起こします。必ずゴム手袋を着用し、目や粘膜に触れないよう注意しましょう。
また、アルミニウムをはじめとする特定の金属を腐食させる性質があります。アルミ製品、真鍮、亜鉛メッキ製品には絶対に使用しないでください。過去にはアルミ缶に入れたことで破裂事故も発生しています。
さらに、ウールやシルクなどの動物性繊維、大理石、無垢の木材なども使用不可です。使用時は必ず換気を行い、使えない素材を確認してから安全に使用することが大切です。
最後に
アルカリ洗剤は、正しく理解して適切に使用すれば、掃除の強い味方となります。汚れの性質を見極め、洗剤の特性を理解し、安全対策を怠らない。この3つのポイントを押さえることで、効率的で安全な掃除が可能になります。頑固な汚れに悩んでいる方は、ぜひアルカリ洗剤の力を活用してみてください。ただし、危険性も十分に理解した上で、正しく使用することを忘れずに。
























